父親の腸内細菌叢が子供に与える影響
5月1日、欧州分子生物学研究所(EMBL)は、プレスリリースにて、父親における腸内細菌叢の構成が子世代に影響を与えると発表した。
腸内細菌叢は消化管に生息し、消化酵素や代謝酵素を作り出す。腸内環境は免疫や内分泌系システムをはじめ、生体機能に影響を及ぼすため、身体の健康を保つうえで腸内細菌叢のバランスが重要になる。
今回、マウスによる実験を通じて、父マウスの腸内環境が乱れて腸内細菌叢のバランスが崩れると子マウスの疾患リスクは増加し、低出生体重や重度の成長制限、早死の可能性が高まることが認められた。なお、研究論文は「Nature」に掲載されている。
父親の腸内細菌叢と子供の疾患リスクにおける関係性
研究チームは、マウスを用いた動物モデル実験を行い、腸内細菌叢と生殖機能における関係性、父親の腸内細菌叢が子供に与える影響を検証した。
雄マウスに対して抗生物質を投与して腸内細菌叢の構成を変化させ、腸内細菌叢のバランス異常(腸内細菌叢を構成する細菌種や細菌数の減少によって細菌叢の多様性が低下した状態)にしたところ、精巣の生理機能、代謝物組成、ホルモン伝達に悪影響を及ぼすことが確認された。
これは、腸内細菌叢のバランス異常を引き起こす血中および精巣内のレプチン(ホルモンの一種)レベルが関係するという。
また、腸内細菌叢のバランス異常である雄マウスと雌マウスを交配させた場合、子マウスの出生体重は大幅に減少し、出生後の死亡率が上昇した。一方、抗生物質の投与を止め、雄マウスにおける腸内細菌叢のバランスが正常に回復すると、誕生した子マウスの出生体重、発育は正常になった。
研究チームは、父親となる男性における腸内細菌叢の変化は子世代に影響を与え、父親になる可能性がある男性は腸内環境を健康に保つことが重要であると提唱する。
(画像はプレスリリースより)
EMBL
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