妊娠期におけるマンガンの重要性
ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生学大学院の研究チームは、「Epidemiology」にて、妊活中および妊娠中、母親となる女性が体内のマンガン量を高めることにより、子癇前症リスクを軽減できると発表した。
子癇前症は妊娠20週以降に発症し、発症率は世界的に増加傾向にある。代表的な症状として高血圧、腎臓などの臓器不全が挙げられ、症状が深刻化した場合、母親の発作、早産など重大な合併症を引き起こす。また、子供の肥満、糖尿病の危険因子となり、子癇前症リスクは高まる。
マンガン量と子癇前症の症状・進行度合いにおける関係性
同大学の先行研究(2019年発表)において、ボストン出生コホート研究より女性1000人以上を対象に出産直後の赤血球のマンガン量を測定したところ、子癇前症を発症していない女性と比べ、子癇前症の女性は体内のマンガン量が低い傾向があることが認められた。
マンガンは必須ミネラル(体内に存在し、栄養素として不可欠なミネラル)であり、酵素の構成成分として成長や生殖に関与する。今回、研究チームは、「Project Viva」(マサチューセッツベース、1999~2002年)を用いて、妊活中の女性1300人以上を対象に、マンガン量と子癇前症の症状・進行度合いにおける関係性を検証した。
子癇前症の症状、血液中マンガン量に関するデータより、妊娠初期にマンガン量が低い女性には、高血圧症候群(妊娠後期の子癇前症)が深刻化する傾向が認められ、低マンガン量と子癇前症には強い因果関係があると報告された。
また、被験者をマンガン量(低量、中量、高量)に基づいて3グループに分けたところ、体内のマンガン量が多いグループでは、マンガン量が低いグループと比べ、子癇前症リスクが半減した。
それゆえ、研究チームは、サプリメントなどで妊娠初期のマンガン量を増加させることによって、妊娠後期に子癇前症が発症するリスクを軽減できると結論付けている。
(画像はJOHNS HOPKINS BLOOMBERG SCHOOL of PUBLIC HEALTHより)

JOHNS HOPKINS BLOOMBERG SCHOOL of PUBLIC HEALTH
https://www.jhsph.edu/