妊娠期の運動による効果
ワシントン州立大学の研究チームは、「Science Advances」にて、妊娠期の運動は有益であり、身体的に健康な女性が妊娠期に運動を行うことにより、胎児により良い健康状態をもたらすと発表した。
妊娠期の運動は、母親の胎内で成長している胎児の褐色脂肪組織(哺乳類の体内にある脂肪および脂肪組織)の生成を刺激する。褐色脂肪は良い脂肪であり、主に、体内で熱を生み出す。一方、白色脂肪は悪い脂肪であり、燃焼しにくく、エネルギーを貯蓄させる。白色脂肪の肥大によって肥満が生じる。
先行研究では、肥満の母親が妊娠期において運動を行うことにより、子供の代謝機能障害および肥満を予防すると報告されていた。今回、母親が健康的な体型である場合も、妊娠期の運動が子供の健康に肯定的な影響を与えることが認められた。
妊娠期の母親の運動が胎児の成長・発達に与える影響
研究チームは、マウスを用いた動物モデル実験を行い、妊娠期の母親の運動が胎児の成長・発達に与える影響を検証した。実験では、母マウスを妊娠期に運動するグループと妊娠期に運動しないグループに分け、誕生した子マウスに対して高エネルギー・カロリーの食事を与えた。
身体的に健康な母マウスが妊娠期において日常的に運動した場合、子マウスは、妊娠中に運動しなかった母マウスから誕生した子マウスと比べ、体重に対して褐色脂肪の割合は大きく、白色脂肪の燃焼が速くなり、肥満の予防・代謝状態の改善が促された。
また、運動した母マウスと子マウスは、運動しなかった母マウスと子マウスより食事量は多くなったが、体重増加は小さかった。妊娠期の運動により、母子の耐糖能(血糖値を正常に維持するためのグルコース・ブドウ糖の処理能力)は改善され、アペリン(褐色脂肪を発達させ、代謝状態を改善する物質)の生成が刺激された。
一方、BMI値は異なるものの、母親が妊娠期にあまり運動をしなかった場合、子供の肥満率は増加した。研究チームは、身体的に健康な母親が妊娠期において日常的に運動を行うことは、胎児の代謝状態にとって、非常に重要であると結論付ける。
(画像はプレスリリースより)

WASHINGTON STATE UNIVERSITY
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