プロトンポンプ阻害薬と早産
カリフォルニア大学の研究チームは、「JCI Insight」にて、プロトンポンプ阻害薬(PPI)「ランソプラゾール」には早産リスクを軽減する効果があると発表した。
プロトンポンプ阻害薬は胃酸の分泌を抑制し、胃潰瘍や逆流性食道炎などの治療に用いられる。
プロトンポンプ阻害薬による早産治療効果
免疫反応である炎症性反応は、陣痛の始まり、あるいは早産を引き起こす。また、早産になった母親および早産で誕生した子供において、免疫経路は著しく調節不全状態であった。
研究チームは、妊娠中のマウスを用いた動物モデル実験を行い、アメリカ食品医薬品局(FDA)承認薬13種類による早産治療効果を検証した。モダリティ(CT、MRIなど医用画像の撮影装置)にて分析したところ、早産を含む免疫反応に影響を与える生物学的経路に作用することが見受けられた。
また、妊娠中のマウスに炎症を誘発する細菌成分が与え、13種類の薬剤を投与し、早産の兆候となる遺伝子の発現を抑制する程度を調査した。「ランソプラゾール」を投与した場合、他12種類の薬剤と比べ、胎児の生存・出産率が最も高く、プロゲステロン投与以上の効果があった。
なお、先行研究では、「ランソプラゾール」が、妊娠合併症に関与するストレス反応タンパク質「ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)」に作用すると報告されている。今回、「ランソプラゾール」には、他12種類と比べて早産の兆候となる遺伝子発現の抑制力が高く、安全かつ早産治療効果が認められた。
現段階ではマウスへの効果検証に留まり、ヒトに対する早産治療効果は検証されていないが、研究チームは、「ランソプラゾール」が早産治療薬として望ましい薬であるとの考えを示している。
(画像はプレスリリースより)

UCSF
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