多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の新治療薬「レトリゾール」
アメリカ国立衛生研究所のリサーチネットワークが実施した大規模な研究により、従来の治療薬「クロミフェン」と比べ、「レトリゾール」は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性に対して治療効果が期待でき、妊娠率は増加すると判明した。
レトリゾールは、乳がんの治療薬として知られている。月経停止・閉経のためエストロゲンの生産が抑制された女性に対して用いられ、脳に卵巣が機能するよう働きかける。
(画像はイメージです 撮影者:
Taki Steve)
「レトリゾール」と「クロミフェン」の治療効果
「レトリゾール」は「クロミフェン」より排卵誘発効果があるだけでなく、出生率も上昇させるという。
ペンシルバニア医科大学産婦人科学部リチャード・S・レグロ博士(Richard S. Legro)は、研究報告書にて「レトリゾール」は副作用などが少なく、低治療費であり、不妊治療による多胎妊娠のリスクが少ないと述べている。
18歳から40歳まで、多嚢胞性卵巣症候群による不妊で悩む女性750人を対象に、女性376人に「クロミフェン」、女性374人に「レトリゾール」を一定期間投与したところ、「レトリゾール」を投与したほうが女性のほうが月経・排卵回数は多く、出産率は高かった。
また、副作用として「クロミフェン」は顔の紅潮、「レトリゾール」は疲労・めまいが生じる。
【比較調査結果】・出産率 レトリゾール:27.5% クロミフェン:19.1%
・多胎妊娠 レトリゾール:3.4% クロミフェン:7.4%
・流産 レトリゾール:31.8% クロミフェン:29.1%
・胎児の先天性異常 レトリゾール:3.9% クロミフェン:1.4%
今回の研究より「レトリゾール」は胎児の先天性異常が生じるリスクが高いと示されたが、レグロ博士は他の不妊治療における先天性異常リスクとの比較は不十分であり、更なる研究が必要だという意向である。
※多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは多嚢胞性卵巣症候群は妊娠適齢期の女性5~10%にみられ、女性不妊の主な要因。インシュリン抵抗性物質が基準値より高くなり、卵巣の表面は肥厚し、卵巣内には多数の卵胞がたまる。(多嚢胞化)男性ホルモン値が異常分泌され、排卵・月経異常や不妊が生じ、多毛・ニキビ・肥満など容姿が男性化する。

Imperial Valley News
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http://www.nejm.org/doi/full/PCOS
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