現時点では診断や治療が難しい男性不妊
アメリカの研究で、男性不妊の原因について、生殖能力を持つ精子と持たない精子の違いとなる要因が、イオン チャネルと呼ばれるタンパク質にあることがわかった。イオン チャネルは、精子の生殖能力にきわめて重要で、精子細胞の細胞膜内で発現する。
この研究は、カリフォルニア大学バークレー校で行われた。著者の1人、メリッサ・ミラー氏によると、男性不妊は基本的に突発性の疾患のため、症例の80%で診断や治療が行われていない現状がある。
この研究では、精子のイオン チャネルの電気活動について、厳重に管理された条件下で記録を行った。3つのイオン チャネルが重要な働きをすることを明らかにし、カルシウムを調整する作用を持つ、精子陽イオン チャネル(CatSper)が最も詳しく調べられた。
男女共用の避妊薬の開発でも注目されているCatSper
CatSperは精子細胞内でのみ発現され、体内の他の細胞では発現が確認されていない。女性ホルモンのプロゲステロンは、非ゲノム経路でCatSperを活性化する。通常の生殖能力を持つ精子では、CatSperはプロゲステロンの増加に伴って、著しく活性化する。
しかし、精子のパッチクランプ解析では、患者のCatSperが欠失する精子細胞でプロゲステロンに対する反応がなく、基礎的なCatSper電流が生じなかった。このことから、ステロイド ホルモンによってヒトの精子内のCatSperチャネルが、直接的に調整されることがわかる。
新しいバイオマーカーとして実用化に期待
CatSper活量の欠乏が男性不妊と強力な関連があることから、この内因性シグナル伝達分子を識別することで、新しいバイオマーカーとして、精子検査がクリニックですばやく行える可能性が示されている。

58th Annual Biophysical Society Meeting
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