原因不明の早産メカニズム
3月8日、南フロリダ大学(USF)ヘルスの研究チームは、同大学プレリリースを通じて、母親の精神的ストレスと早産には関連性があり、ストレス応答タンパク質「FKBP51」がストレス起因の早産に関与していると発表した。
研究論文は、「Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)」(3月8日)に掲載されている。
精神的ストレスと早産における強い関連性
早産は妊娠37週以前の妊娠と定義されるが、そのうち40%から50パーセントが突発性の自然分娩であり、何らかの原因で自然に陣痛が来て産まれてしまうという。
これまで、精神的ストレスと突発性(原因不明)の早産において強い関連性があり、妊娠中の母親の精神的ストレス(鬱、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など)が原因不明を引き起こすと考えられてきた。
妊娠継続と子宮のプロゲステロン量
研究チームは、母親の脱落膜細胞(妊娠終了に伴い胎盤と共に剥脱する子宮内膜組織の一部)、FKBP5遺伝子(FKBP51を作る遺伝子)を破壊したノックアウトマウス(標的遺伝子破壊マウス)を解析し、母親のストレスに起因する突発性(原因不明)の早産メカニズムを検証した。
先行研究では、正期産(妊娠37~42週)の自然分娩は、特に、母親の脱落膜細胞におけるプロゲステロン受容体の発現減少とFKBP5遺伝子の発現増加に関係することが認められた。
今回、ストレス応答タンパク質「FKBP51」はプロゲステロン受容体と結合し、子宮におけるプロゲステロン受容体の機能を阻害することが認められた。
妊娠中、プロゲステロン(黄体ホルモン)は子宮収縮を抑制するため、早産予防と妊娠継続にはプロゲステロン量の維持が不可欠となる。プロゲステロン受容体の発現減少は、分娩発来を刺激する。
また、脳内のFKBP5量とストレス疾患には強い関連性があり、脳内にてFKBP51発現が増加することに伴い、ストレス関連の疾患リスクは増加する。
研究チームは、妊娠期の母親がストレスを受けることによって、子宮におけるFKBP51の過剰発現、FKPB51とプロゲステロン受容体の結合が生じ、プロゲステロン機能は低下し、早産が引き起こると考える。
(画像はプレスリリースより)

USF Health
https://hscweb3.hsc.usf.edu/