新型コロナウイルス感染症による健康影響
フィレンツェ大学の研究チームは、「Human Reproduction」にて、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)に感染し、回復した男性のうち、25%の精子に異常が確認されたと発表した。
なお、男性の精液中には、新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルス「SARS-CoV-2」は検出されなかった。精液中にウイルスRNAは検出されなかったが、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」は精子の質に悪影響を及ぼすことが認められた。
新型コロナウイルス感染症と男性の生殖能力
研究チームは、新型コロナウイルス感染症に感染し、回復した男性43人を対象に、新型コロナウイルス感染症が男性生殖機能に対して及ぼす影響を検証した。
被験者から採取した生体サンプル(唾液、射精前の尿、精液、射精後の尿)に対してRT-PCR検査(リアルタイムPCR検査)を実施し、生体サンプル内の「SARS-CoV-2」を検査した。RT-PCR検査ではRNAにPCR(検査材料中に存在する微生物の遺伝子を検出する検査)を実施するが、全ての生体サンプル内にウイルスRNAが検出された。
RT-PCR検査に加えて、通常の精液分析を行い、精液中の白血球量およびインターロイキン-8(IL-8)量を計測したところ、新型コロナウイルス感染症に感染し、回復した男性のうち25%(精液障害11人、無精子症8人、乏精子症3人)において、精子の異常が確認された。また、33人には、精液中のインターロイキン- 8が異常レベルとなった。
精液の質、精液中の新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」を測定したデータ件数は少なく、研究は限定的であるが、研究チームは、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」により、不定型無精子症(無精子症と診断された精液に対して遠心分離機を用いると細胞中に極少数の精子を検出できる状態)リスクが高まると結論付ける。
(画像はHuman Reproductionより)

Human Reproduction
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