肥満の母親と子供への健康影響
ブラジルの研究チームは、「Molecular Human Reproduction」(Volume 26 Issue 12 2020年12月)にて、マウスを用いた動物モデル実験を通じて、母親が肥満の場合、子供は、代謝疾患を発症しやすい傾向にあると発表した。
代謝疾患の世代間伝達とミトコンドリア外膜タンパク質mitofusin-2
代謝疾患の世代間伝達には、母親の卵母細胞におけるミトコンドリア外膜タンパク質mitofusin-2(Mfn2)欠乏が関係すると考えられる。Mfn2は、ミトコンドリア(細胞にエネルギーを供給する細胞小器官)の外膜に存在し、血管平滑筋の細胞増殖を制御する。
Mfn2が欠乏した場合、ミトコンドリアの膨張および機能不全を引き起こし、女性の配偶子において約1000の発現が変わるという。
それゆえ、代謝を調整するうえで、Mfn2は重要となる。これまで、体重増加は、血糖値の制御に関与する筋肉細胞および肝臓細胞にあるタンパク質の減少によって生じることが確認されている。また、筋肉細胞および肝臓細胞にあるタンパク質の減少は、糖尿病を発症させるという。
卵母細胞のMfn2欠乏による影響
研究チームは、卵母細胞のMfn2発現を操作したマウスを用いた動物モデル実験を行ったところ、Mfn2欠乏の卵母細胞に由来する子マウスは、Mfn2がある卵母細胞に由来する子マウスと比べて、より大きな体重増加が認められた。合わせて、標準的な餌を与えたにも関わらず、生後9ヶ月までに糖尿病を発症した。
今回、動物モデル実験を通じて、卵母細胞におけるMfn2欠乏は、ミトコンドリア数の減少、生命活動のエネルギー媒介物質であるアデノシン三リン酸(ATP)量の低下に関係することが確認された。また、ミトコンドリアは凝縮され、通常サイズの2倍まで膨張し、ミトコンドリアと小胞体は離れ、接触部位はなくなった。
研究チームは、卵母細胞にてMfn2が欠乏し、ミトコンドリアと小胞体の接触部位が形成されない場合、卵母細胞は機能不全になると説明する。
(画像はMolecular Human Reproductionより)

Molecular Human Reproduction
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