新型コロナウイルス感染症と男性生殖機能への影響
ガジ大学健康科学研究所(トルコ・アンカラ)ジャミーレ・シーメンス(Cemile Seymens)氏は、「JOURNAL OF MEDICAL VIROLOGY」にて、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の感染は、男性のリプロダクティブ・ヘルスに否定的影響を及ぼすと発表した。
新型コロナウイルス感染症に感染した場合、原因ウイルス「SARS-CoV-2」により、男性生殖細胞がもつオートファジー・自食作用(細胞がもつ細胞内タンパク質を分解する仕組み)が制御され、生殖疾患が引き起こり、男性生殖機能・能力は低下するという。
コロナウイルスの宿主細胞受容体として
同氏は、宿主細胞由来タンパク質「アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)」および「II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)」が、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス「SARS-CoV-2」の侵入に関与すると推測する。
ACE2、TMPRSS2は、男性生殖システム(生殖管)に多く存在する。SARS-CoV-2は表面にスパイクタンパク(突き出した糖タンパク質)をもち、ウイルスの表面構造と人間細胞のウイルス受容体となるACE2受容体が結合し、侵入する。
なお、今年初めに発表された研究論文では、ACE2メッセンジャーRNA(mRNA)が、精巣の生殖細胞と体細胞に多く発現すると報告されている。
一方、他論文によると、精原細胞のセルトリ細胞(精上皮の基底側から管腔側に向かって伸びる柱状の細胞)およびライディッヒ細胞(精巣の精細管の付近にある細胞)において、ACE2の発現を認めたと報告されている。
また、シーメンス氏は、研究の余地はあるものの、前立腺におけるSARS-CoV-2感染には、TMPRSS2が関与すると考える。
(画像はWiley Online Libraryより)

Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmv.26667NEWS MEDICAL
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