母から子への遺伝
シンガポール国立大学医学部の研究チームは、「Science」にて、母親由来の抗体「免疫グロブリンE(IgE)」は母から子へ継承され、胎盤を通過して子宮内にいる胎児の肥満細胞と結合して子供にアレルギー反応を発症させると発表した。
母親のアレルギー反応と子供のアレルギー反応には、遺伝のみでは説明できない関連性があり、今回、胎児の肥満細胞は妊娠期間を通して表現型的に成熟し、胎盤壁を通過した母親由来の免疫グロブリンEによってアレルギー感受性をもつことが判明した。
母親と子供で同じアレルギー反応
研究チームは、マウスを用いた動物モデル実験を行い、母マウスがもつ免疫グロブリンE(アレルギー反応の引き金となる主要な抗体)が胎盤を通り抜けて子マウスの肥満細胞と結束することを確認した。
母親の抗体は、胎盤を通過して子宮内にいる胎児の体内に侵入し、胎児の肥満細胞(鼻炎、喘息などのアレルギー反応を誘発する化学物質を分泌する免疫細胞の一種)と結び付く。
出生後、子マウスには、最初に曝露した母マウスの抗体に対して敏感になり、母マウスと同じアレルギー症状が現れた。例えば、母マウスが花粉に対してアレルギー反応が出る場合、子マウスは、ブタクサに対してアレルギー反応が出た。感受性は特異的であり、ハウスダストなど他アレルゲンに対するアレルギー反応は出なかった。
また、ラボ規模ではあるが、人間においても類似した過程が認められ、母親の免疫グロブリンEが胎盤を通過し、胎児の肥満細胞と結束した。研究チームは、妊娠期の母親が重度のアレルギー疾患をもっている場合、母親の免疫グロブリンEは潜在的に子供へ継承されると推測する。
母由来の免疫グロブリンEを引き継いだ子供は、最初に曝露したアレルゲン(アレルギー症状を引き起こす原因となる物質、アレルギー疾患をもつ人の抗体と特異的に反応する抗原)」に対して敏感になり、アレルギー反応を発症するという。
(画像はDukeNUSより)

DukeNUS
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