子宮内膜症と炎症性サイトカイン
アメリカの研究チームは、子宮内膜症の女性において、子宮内膜吸引は子宮内膜液を評価するうえで安全かつ効果的なアプローチであり、子宮内膜症の症状が中度から重度の場合、子宮内膜症でない女性と比べ、明確なサイトカインプロファイルが認められたと発表した。
サイトカインとは免疫系細胞から分泌されるタンパク質であり、細胞間の情報伝達を担う。特異的受容体に結合することで免疫反応の増強・制御、細胞増殖、分化の調節などを行う。子宮内膜症ステージ3および4では、子宮内膜分泌物に炎症性サイトカイン「IL-1α」「IL-1β」「IL-6」が検出されたと報告された。
子宮内膜分泌物における成長因子・サイトカインを比較した前向きコホート研究
研究チームは、子宮内膜症の腹腔鏡下手術を受けた女性38人、子宮内膜症でない女性22人を対象に、子宮内膜分泌物における成長因子およびサイトカインプロファイルを比較した。
子宮内膜症の女性では、ステージ3(子宮内膜に似た組織が拡大し、卵巣・卵管・腹膜などが癒着した状態)からステージ4(癒着が卵管・卵巣、子宮、膀胱・直腸、小腸など骨盤内の臓器全体に広がった状態)、ステージ1(自覚症状なし)からステージ2(初期症状)共に19人であった。
子宮内膜症の腹腔鏡下手術前に子宮内膜液吸引を行い、マルチプレックスアッセイ(少量の生体サンプルから広いダイナミックレンジ(識別可能な信号の最小値・最大値の比率)にて多項目同時解析できる実験手法)により、7サイトカインおよび成長因子を定量化した。
また、7サイトカインおよび成長因子は、統計学的検定「マン=ホイットニーのU検定(Mann-Whitney U Test:対応のない2群間比較)」「クラスカル・ウォリス検定(Kruskal-Wallis Test:3群以上の中央値比較)」に基づき、評価された。
子宮内膜液の分析より、子宮内膜症の症状が中度から重度(ステージ3および4)の女性では、炎症性サイトカイン「IL-1α」「IL-6」の大幅な増加が確認された。一方、ステージ1および2では、子宮内膜症に伴う炎症性サイトカインの増加は認められなかった。
それゆえ、研究チームは、子宮内膜分泌物における炎症性サイトカイン「IL-1α」「IL-1β」「IL-6」にて、子宮内膜症の症状(ステージ3および4)を予測できると結論付ける。
(画像はSpringer Linkより)

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