妊娠期の食事による影響
広島大学の研究チームは、「Communications Biology」(8月28日掲載)にて、妊娠期の母親が低オメガ3脂肪酸/高オメガ6脂肪酸の食事を摂ることにより、胎児脳のニューロン成長に異常が生じ、子供が高カロリー食を好む傾向になると発表した。
マウスを用いた動物モデル実験を通して、妊娠中の母マウスに低オメガ3脂肪酸量/高オメガ6脂肪酸のエサを与えたところ、誕生した子マウスには過食気味となった。一方、低オメガ3脂肪酸量/高オメガ6脂肪酸のエサを食べていなかった母マウスから生まれた子マウスには、過食傾向および高カロリー食を好む傾向は見られなかった。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸のバランス
オメガ6脂肪酸は、グレープシードオイル・ブドウ種子油(ヨーロッパブドウの種子から抽出される油脂)、コーンオイル、ゴマ油に含まれる。世界の料理において定番であるサラダドレッシングより摂取できる。一方、オメガ3脂肪酸は魚、エゴマオイル(荏胡麻油)、リンシードオイル・アマニ油(亜麻仁油)に含まれる。
赤血球膜においてオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸のバランスが悪い場合、脂肪酸2タイプは細胞膜への吸収を競い合い、結果、体重増加が引き起こる。先行研究では、妊娠中の母マウスが脂肪酸のバランスが悪いエサを食べることにより、胎児脳にて脂肪酸の不均衡が複製され、脳発達を損ねたと報告されている。
脂肪酸のバランスと胎児脳の成長
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸のバランスは、健康な胎児脳の成長を促すうえで重要になる。妊娠期の母親にとって、妊娠期の母親が脂肪酸のバランス良い食事を摂ることで、胎児脳は子宮内にて中脳のドーパミン神経細胞、つまりは脳の神経学的報酬システムの成長を助長させるという。
マウスの場合、ヒト以上に脂肪酸のバランスによる影響を受けるが、今回、妊娠期の特定期間において、胎児脳の中脳が低オメガ3脂肪酸量/高オメガ6脂肪酸に晒されるとドーパミン神経細胞が過剰に作られ、子供は、生涯に亘って糖質・脂肪を多く含む高カロリー食を好む傾向が認められた。
また、ドーパミン再取り込み阻害薬には子供の過食傾向を抑制する効果が確認され、研究チームは、過食においてドーパミンシグナルが重要な役割を担うと考える。
(画像はプレスリリースより)

HIROSHIMA UNIVERSITY
https://www.hiroshima-u.ac.jp/en/news/60017