凍結胚の破棄における長期的傾向調査
アメリカの研究チームは、「Journal of Assisted Reproduction and Genetics」にて、世界中の生殖補助医療実施医療機関を対象にした後向きコホート研究(2000年1月~2020年2月)を通して、2013年以降、胚を凍結保存する30歳未満の女性のうち、大半が凍結胚の破棄を選択していることが認められると報告した。
凍結胚を破棄する傾向
凍結胚の破棄における長期的傾向調査では、女性の年齢、学歴、人種、宗教、住居地、居住地域の地理的剥奪指標(地区の貧困の水準を指標化した指標)、体外受精による妊娠・出産歴に従って、凍結胚を破棄する決断におけるオッズ比を算出した。合わせて、凍結胚を破棄した年、凍結胚の保存期間および保存数を評価した。
不妊治療患者615人を対象に傾向を調査したところ、半数の女性(50.6%)が凍結胚を破棄していた。一方、45.4%は研究用の胚として、4.1%は第三者に対する卵子ドナー(卵子提供者)として凍結胚を提供した。研究材料としての提供には、2つの要因「提供条件あるいは宗教的選択」「体外受精による多胎児の出産後」が顕著に関連していた。
2012年以前、胚を凍結保存している30歳未満の女性は、胚の研究機関への提供、胚の破棄を選択する割合が同等であった。2013年から2020年の間は、胚を研究機関に提供する以上に、胚の破棄を選択する割合が顕著に増えた。
研究チームは、研究用の受精卵(胚)を十分に確保するうえで、不妊治療において胚を凍結保存する傾向にある若い患者は、自身の凍結胚を研究用の胚として提供する選択肢を検討するように提言する。
(画像はSpringer Linkより)

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