受精に伴う酵素の役割
カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは、「Cell」(3月12日掲載)にて、精子と卵子の受精による受精卵の発生に伴い、酵素「SPRK1」が受精卵に父親由来のゲノムを組み合わせると発表した。
精子と卵子が受精すると、父親由来のゲノムと母親由来のゲノムが組み合わさり、受精卵が発生する。受精の数時間後、酵素「SPRK1」は、第一段階として、精子のゲノムをほどき、特別なパッケージングのタンパク質を出す。父親のDNAが開放され、受精卵に組み込まれ、再組織化される。
ヒストン‐プロタミン置換とRNA接合
精子は、体内の正常細胞と比べて20倍以上も小さい。精子がもつ遺伝子物質は、正常細胞に含まれる半分量であるうえに、DNAはタンパク質であるヒストンに巻き付けられ、規則正しく折り畳まれ、収納される。また、ヒストンは、異なるタンパク質タイプのプロタミンに置き換わる。
一方、酵素「SPRK1」にはRNAを接合する機能があり、遺伝子からRNAを合成し、RNAをもとにタンパク質を作る過程において重要となる。
先行研究では、RNAスプライシングにおける酵素「SPRK1」の役割が提示され、酵素「SPRK1」(酵素が作用するタンパク質)とプロタミンを構成し、天然に存在するアミノ酸ビルディングブロックとの類似点が報告された。
今回、精子と卵子の受精に伴い、酵素「SPRK1」がヒストンとプロタミンを置換することが認められた。初期胚形成にはヒストン‐プロタミン置換、その後、RNA接合といった二重の役割を担う。
研究チームは、精子形成・受精・胚形成プロセスにおいて酵素「SPRK1」が担う役割を理解することにより、生殖機能不全などの不妊治療が可能となり、今後、更なる研究の必要性があると考える。
(画像はプレスリリースより)

US San Diego
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