子宮腺筋症が妊娠・出産に与える影響
6月28日、ウェスタン・オンタリオ大学の研究チームは、第39回欧州ヒト生殖医学会「ESHRE2023」(6月25~28日、デンマーク・コペンハーゲン開催)にて、子宮腺筋症によって妊娠合併症ならびに出産合併症のリスクが増すと発表した。
今回、子宮腺筋症の女性は、出産における帝王切開の可能性が増すと報告された。子宮腺筋症の場合、子宮腺筋症でないケースと比べて帝王切開の可能性は20倍以上となり、子宮摘出をはじめ、合併症リスクが増加するという。
子宮腺筋症と妊娠・出産合併症
子宮腺筋症とは 子宮内膜組織が子宮筋層の中にできる疾患であり、月経痛や過多月経(月経血量の過多)などの症状を来す。子宮内膜組織が子宮外にできる子宮内膜症に起因し、子宮内膜症と同様児に女性不妊、早産、婦人科疾患などのリスクが高まるといわれる。
研究チームは、全米入院情報抽出データベース「Nationwide Inpatient Sample(NIS)」を用いて、2004年から2014年の期間、子宮腺筋症でない妊婦909万4321人と子宮腺筋症の母親2467人を対象に比較調査を実施した。
その結果、子宮腺筋症の女性は、高齢、肥満の傾向が認められた。慢性高血圧、甲状腺疾患、妊娠糖尿病を患っている可能性が高く、妊娠・分娩リスクは増した。
妊娠中は前置胎盤(胎盤が子宮口を塞ぐ状態)になりやすく、子宮腺筋症でない妊婦と比べて、膣分娩リスクは5.86倍であったという。例えば、帝王切開リスクは21.63倍、子癇前症(高血圧と尿タンパク)の発症リスクでは1.69倍、高血圧の発症リスクは1.5倍増加した。
しかしながら、今回の調査では、子宮腺筋症に伴う妊娠・分娩リスクの増加要因は明らかになっていない。研究チームは、炎症性変化、胎盤の血流変化、年齢、生殖補助医療技術の進歩など複数因子が潜在的に関与していると推測する。
(画像はeshreより)

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