炎症性腸疾患が妊娠に及ぼす影響
11月7日、ヨーテボリ大学(スウェーデン)の研究チームは。同大学プレスリリースを通じて、炎症性腸疾患(IBD)は妊娠に悪影響を及ぼし、腸粘膜の炎症によって早産リスクが増すと発表した。
腹痛・下痢・血便・発熱などの症状が良くなったとしても、腸粘膜の炎症がある状態では早産リスクは高いままであるという。なお、研究論文は「eClinicalMedicine」にて掲載されている。
炎症性腸疾患とは
炎症性腸疾患(IBD)は主に、大腸粘膜に炎症は生じる慢性疾患である。潰瘍性大腸炎やクローン病を含む炎症性腸疾患は、過敏性腸症候群(IBS)とは異なる。15歳から30歳で発症しやすく、症状の特徴は寛解(症状が良くなった状態)と再燃(症状が悪化した状態)を繰り返す。
これまで、炎症性腸疾患は、早産(妊娠37週未満の出産)など妊娠に悪影響を及ぼすといわれてきた。また、炎症性腸疾患の明らかな症状が出ていない場合でも、腸粘膜に微視的な炎症が認められるケースが少なくないという。
炎症性腸疾患が妊娠に及ぼす影響
今回、研究チームは、1990年から2016年の期間、妊娠前から炎症性腸疾患のスウェーデン人女性を対象に炎症性腸疾患が妊娠に及ぼす影響を検証したところ、炎症性腸疾患による腸粘膜の微視的な炎症、とりわけ潰瘍性大腸炎は、早産リスクを上昇させることが認められた。
また、炎症性腸疾患(腸粘膜の顕微鏡的な炎症あり)では早産が9.6%となり、炎症性腸疾患でない場合(早産6.5%)と比べて高くなった。これは、早産リスクが46%増加したことに相当する。一方、顕微鏡的な炎症は、胎児発育遅延など他の妊娠転帰リスクとの明確な関連性は確認されなかった。
これより、研究チームは、炎症性腸疾患による腸粘膜の炎症が早産リスクを上昇させる要因となり、表出している症状に加えて腸粘膜の炎症に対する治療によって早産リスクが軽減すると結論付けている。
(画像はプレスリリースより)

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