受精卵の発育不全と染色体異常を引き起こす要因とは
7月19日、コロンビア大学ヴァジェロス医学大学院の研究チームは、同大学院プレスリリースを通じて、体外受精において受精卵(胚)の成長・発育が止まる要因の大部分は、細胞分裂の初期段階におけるDNA複製エラーであると発表した。
つまり、細胞分裂の初期段階で突然変異が生じた場合、胚の成長・発達は妨げられ、染色体異常が引き起こるという。なお、研究論文は「Cell」(7月19日)に掲載されている。
DNA複製は困難なプロセスである
精子と卵子の受精から24時間前後が経過すると、受精卵では細胞分裂が始まる。細胞分裂を通じて、全ゲノム、つまり30億以上のDNAペアに基づく46本の染色体は、忠実に複製される。そして、父由来の染色体23本を持つ精子と、母由来の染色体23本の持つ卵子が受精して46本の染色体を持つ受精卵が誕生する。
しかしながら、全ての受精卵が必ずしも成長・発育できるとは限らない。多くは、染色体の異常(本数が多い、少ない)を起因として受精から数日以内に成長・発育が止まり、死滅するといわれる。
そこで、今回、研究チームが受精卵の細胞分裂プロセスを観察したところ、染色体異常は、ゲノムDNAが複製される細胞分裂の超初期段階において生じるエラーに起因することが認められた。
また、受精卵におけるDNA複製エラーの大部分は、紡錘体微小管(ゲノム染色体を2個の細胞に分配する働きをもつ)にて確認された。
解明には至らなかったものの、DNA複製エラーはDNAの二重螺旋構造内で障害となる物から生じ、その結果、DNAの複製が休止あるいは停止し、染色体数に異常が誘発されるという。
(画像はプレスリリースより)

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