妊娠中の食物渇望
4月4日、バルセロナ大学(スペイン)の研究チームは、同大学プレスリリースを通じて、妊娠によって神経活動に変更が生じ、強迫的な摂食行動や食物渇望が起こると発表した。
食物渇望とは、特定の食べ物を食べたくて我慢できなくなる激しい欲求である。特に、妊娠中は、特定の食べ物への渇望感が強まるといわれる。しかしながら、これまで、妊娠中に食物渇望が起こるメカニズムは未解明であった。
なお、研究論文は「Nature Metabolism」に掲載されている。
ドーパミンと強迫的な摂食行動
妊娠中、母親の身体は、胎児の成長や出産に向けて一連の生理学的および行動的変化を受ける。その一つが、甘い食べ物に対する渇望である。しかしながら、美味しくて高カロリーの食べ物への渇望は、妊娠中の体重増加および肥満リスクを高める。
今回、研究チームは、妊娠している雌マウスを用いた動物モデルを用いて、妊娠中に食物渇望が起こるメカニズムを解析したところ、マウス脳内の報酬系回路(リワードシステム)において機能的な変化が生じ、その結果、甘い味や甘い食べ物により敏感となり、高カロリーな食べ物への渇望感が強まることが認められた。
報酬系回路とは、味覚と感覚といった連合学習を生み出し、幸福感や満足感を高める。食行動や性行動など本能的行動から心地良い刺激・快感刺激という報酬を得ると活性化され、中枢神経系に存在する神経伝達物質「ドーパミン」を放出する。
研究チームは、妊娠によって報酬系回路に変更が生じ、側坐核(前脳に存在する神経細胞集団)のドーパミンD2受容体の活動が増加するとドーパミンが活発となり、甘い味に快楽を感じるようになり、高カロリーの甘い食べ物への渇望感が強くなると考える。
(画像はプレスリリースより)

UNIVERSITAT DE BARCELONA
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