女性の年齢と遺伝子の発現
11月10日、ヨーロッパの研究チームは、「Human Reproduction」にて、女性の年齢が卵母細胞の成長過程に大きく影響すると発表した。
年齢の上昇に伴い、未成熟卵であるGV期から成熟卵であるMⅡ期までの成長過程において、ミトコンドリアの転写物が減少した。加齢が卵子のトランスクリプトーム(全遺伝子発現)に影響を及ぼし、その結果、卵子の質が変化するという。
なお、未成熟卵であるGV期(第一減数分裂前期)とは、卵子内に卵核胞(未成熟卵にある核で成熟過程が始まると崩壊する)が確認できる状態とされる。また、成熟卵であるMⅡ期(第二減数分裂中期)は、極体(余分な染色体を有する細胞片)を排出した状態となる。
年齢が卵母細胞の成長過程に与える影響
これまで、初期胚の発生過程は、卵子形成過程で卵母細胞に蓄積・保存された母体の転写物に従って進行するといわれてきた。年齢は卵子の転写活性に影響を与え、年齢が高い女性の卵子では、年齢が低い女性の卵子と比べて生殖能力は低下する。
今回、研究チームは、体外受精患者15人(21~44歳)から提供された卵子を対象に、年齢が卵母細胞の成長過程に与える影響を検証した。
卵子にhCGを注入して38時間後に解析したところ、年齢によってミトコンドリアの構造および機能に大きな相違が認められた。
年齢の低い女性群(21~26歳)の場合、ミトコンドリアが卵子に必要なエネルギーをつくっていた。一方、年齢の高い女性群(41~44歳)では、ミトコンドリア機能が衰え、十分なエネルギーをつくりだせなかった。
つまり、母体の加齢に伴い、ミトコンドリアは老化し、その結果、卵子の老化につながる。卵子の質、生殖能力は低下する。
(画像はHuman Reproductionより)

Human Reproduction
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