子癇前症の要因となる酵素
9月8日、テキサス大学サウスウェスタン医療センターの研究チームは、同大学プレスリリースを通じて、体内のタンパク質機能を抑制する酵素「プロテインホスファターゼ2(PP2A)」が子癇前症の主な要因であると発表した。
子癇前症は、高血圧と尿タンパクを特徴とする妊娠合併症である。早産を引き起こし、重症化すると母子の命も脅かす。
今回、酵素「PP2A」が子癇前症を発症させるメカニズムが特定され、子癇前症の治療法を開発できると期待される。なお、研究論文は「Circulation Research」に掲載されている。
子癇前症が発症するメカニズム
抗リン脂質抗体症候群(APS)は自己免疫疾患であり、細胞の表面にあるタンパク質に対する自己抗体「APS抗体」がみられる。発症率は10万人に5人程度と低いものの、子癇前症の妊婦では約29%にAPS抗体が検出された。
研究チームが、APS抗体をもつ妊娠マウスを用いた動物モデル実験を行ったところ、高血圧や尿タンパクといった子癇前症の症状が現れ、母親から胎児への栄養供給が阻害されていることが認められた。
通常、胎児の栄養膜細胞は、胎盤内の母親側と胎児側を行き来して、母親の栄養を胎児へ受け渡している。しかしながら、APS抗体をもつ子癇前症のマウスでは、母親から胎児へ栄養が供給されず、胎児の成長が妨げられていた。
そこで、APS抗体の作用に関与するタンパク質「ApoER2」を排除したところ、体内のタンパク質機能を抑制する酵素「PP2A」の働きが阻害され、APS抗体をもつ妊娠マウスは子癇前症を発症せず、胎児は正常に成長・発育した。
つまり、タンパク質「ApoER2」がAPS抗体を活性化させて酵素「PP2A」を誘発し、結果として子癇前症が生じるという。
今後、更なる研究は必要ではあるが、今回の発見によって子癇前症の予防および治療法を開発できると期待される。
(画像はプレスリリースより)

UT Southwestern Medical Center
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