新型コロナウイルスと精子数の減少
アメリカの研究チームは、「Emerging Infectious Disease」(Volume 28、2021年11月1日-2022年1月)にて、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の原因ウイルス「SARS-CoV-2」と精子数の減少に因果関係が認められたと発表した。
これまで、新型コロナウイルスによる男性生殖機能への影響は、明らかになっていなかった。今回、精液内に新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」が検出された男性は、精子数が減少していたと報告された。
精巣へのウイルス侵入と男性生殖機能に与える影響
SARS-CoV-2はACE2受容体(アンジオテンシン変換酵素2)に結合して、細胞内に侵入するといわれる。先行研究2件では、急性期(症状が急に現れる時期)および回復期初期段階において、精液内にて新型コロナウイルスが検出され、精巣へのウイルス侵入が報告されている。
そこで、研究チームは、2020年3月にコロナ陽性の男性107人(平均年齢38.7歳)を対象に、鼻咽頭スワブ標本採取(鼻咽頭における検体採取)、抹消血単核細胞(PBMC)、血漿、便・直腸スワブ標本採取、唾液、精液を採取し、新型コロナウイルスが男性生殖機能に与える影響が検証した。
被験者7人(ヒスパニック2人、白人3人、黒人2人)から提供された17の精液サンプル分析したところ、いずれも中等度から重度の深刻な乏精子症であった。特に、コロナ発症後81日目の男性から採取した精液サンプルにおいて運動精子は一切認められなかったという。
また、3人には精子数の回復が確認されたものの、2人は回復期後期段階であっても精子数が減り続けた。なお、7人にはHIV感染歴がある男性、肥満の男性が含まれた。
サンプル規模は非常に小規模で限定的であるが、研究チームは、新型コロナウイルスと精子数の減少において関連性はあると結論付けている。
(画像はEmerging Infectious Diseaseより)

Emerging Infectious Disease
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/28/1/21-1521_article