体外受精において最適な胚移植のタイミング
8月23日、ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)の研究チームは、同大学プレスリリースを通じて、子宮内膜にある分子「ポドカリキシン(PCX)」が消滅すると子宮の粘着性が増し、受精卵の着床率が高まると発表した。
なお、研究論文は、 「Fertility and Sterility」および「Human Reproduction」に掲載されている。
「着床の窓」を確実かつ正確に見極める困難さ
体外受精の成功率を高めるには、胚移植のタイミングが重要となる。最適なタイミングで受精卵を子宮に戻すことによって着床しやすくなり、妊娠可能性は高まる。
この胚移植に最も適したタイミングを「着床の窓/着床ウィンドウ」と呼ぶ。「着床の窓」とは、子宮内膜の妊娠準備が完了して子宮壁に受精卵が接着しやすい状態となり、受精卵の着床が可能になるタイミングである。
しかしながら、現在の生殖補助医療において、「着床の窓」を確実かつ正確に見極めることは難しく、このため、体外受精成功率は平均50%以下となっている。
最適な胚移植のタイミングとは
今回、研究チームは、子宮内膜に「ポドカリキシン(PCX)」が検出された女性81人を対象に、子宮内膜のポドカリキシン量と凍結融解胚を用いた体外受精の成功率における関係性を検証した。
子宮内膜のポドカリキシン量が少ない女性群は、凍結融解胚を用いた体外受精成功率は53%となった。一方、子宮内膜のポドカリキシン量が減少せずに多いままであった女性群では、僅か18%に留まった。
子宮表面にテフロンのような分子「ポドカリキシン(PCX)」が存在する場合、受精卵の着床は妨げられた。子宮表面にポドカリキシンが存在すると子宮の粘着性が弱まり、子宮内膜に受精卵が接着できないという。
あわせて、月経サイクルを通じて、ポドカリキシンが減少して消滅するタイミングが確認された。子宮表面からポドカリキシンが消滅すると子宮の粘着性が増し、受精卵が子宮壁に接着しやすい状態になる。これこそが子宮内膜の妊娠準備が完了し、最も適した胚移植のタイミングであると報告された。
研究チームは、子宮内膜のポドカリキシン量を測定することによって「着床の窓」を確実かつ正確に見極められ、体外受精の着床率・成功率は向上すると期待する。
(画像はプレスリリースより)

RMIT
https://www.rmit.edu.au/