卵子の成熟や胚の初期発達を解明する糸口
8月3日、ヘルシンキ大学の研究チーム(フィンランド)は、同大学プレスリリースを通じて、低分子のノンコーディングRNAを解析することでヒト胚の初期発達段階が解明され、不妊治療の開発につながると発表した。
低分子のノンコーディングRNAは、タンパク質を作る情報を持たない分子量が少ないリボ核酸であり、胚の成長段階においてゲノム機能を抑制する働きをもつ。
卵巣や受精卵(胚)から得た情報、つまり、低分子のノンコーディングRNAは、例えば早期流産や妊娠合併症など妊娠中に生じている問題に対する理解に活かせ、効果的な不妊治療の開発につながると期待できる。
謎が多い生命の誕生
ヒト胚の初期発達段階には、いまだ解明されていない部分が多く残る。
受精後、母(卵子)由来の遺伝物質と父(精子)由来の遺伝物質は融合し、受精胚ゲノムを形成する。受精から数日経過すると、胚は4つの細胞から構成される。この時、受精胚ゲノムはすでに活性化しており、RNA分子が初めて生成される。
なお、タンパク質コード遺伝子(タンパク質を作る情報を持つ遺伝子)から成るゲノムは全体の約2%にも満たず、残りの98%から99%はノンコーディング遺伝子(タンパク質を作る情報を持たない遺伝子)となる。
このノンコーディング遺伝子が、ゲノム全体の機能を制御する低分子RNAを作る。
胚の初期発達段階に着目した研究
今回、研究チームは、初めて、異なる成熟段階の卵子、受精した卵子、胚の初期発達段階において、シーケンシング技術にて低分子のノンコーディングRNAを解析した。
卵子の低分子RNA分子の多くは、ヒトおよび霊長類の卵子に属し、マウスなどの動物には認められなかった。これは、胚の成長段階を理解するうえで重要なマイルストーンになるという。
(画像はプレスリリースより)

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