親から子へ伝達
3月16日、マギル大学(カナダ)の研究チームは、同大学プレリリースを通じて、精子における非DNAメカニズムによる環境情報の継承メカニズムが特定され、精子を介して、父親のライフスタイルが子供に伝達されると発表した。
精子が父親の環境(食生活)を記憶し、非DNAベースでその情報を受精卵(胚)に伝達することが判明した。また、精子タンパク質の変化が成長中の胚に悪影響を及ぼすという。研究論文は「Developmental Cell」にて掲載されている。
父親の食生活が精子を介して胚に与える影響
両親由来のDNAは、子供の健康および疾患を決定付ける。特に、父親のライフスタイル(食生活、体型、ストレスレベルなど)は、子供の健康に関連するといわれる。
これは、エピゲノム(遺伝子の働きを決める仕組み「エピジェネティクス」の集まり)を介して起こり、DNAやDNAに結束するタンパク質に関連する遺伝性の生化学的マークとなる。
しかしながら、これまで、受精時における親から子への遺伝子情報の継承メカニズム、このプロセスに関与する精子メカニズムと分子は不明であった。
今回、研究チームは、マウスを用いた動物モデル実験を行い、成長・発達に影響する情報を胚に伝達するメカニズムを検証した。雄マウスに葉酸が欠乏した餌を与え、DNAに関連するタンパク質分子のうち特定の分子群に対する影響を追跡し、精子エピゲノムを操作した。
食事が誘発する変化は、ヒストンタンパク質(DNAを細胞に格納するタンパク質)に関連するメチル基に確認され、胚の遺伝子発現における変化、背骨や頭蓋骨の先天性欠損を引き起こすことが認められた。精子ヒストンにおけるメチル基の変化は受精に伴い、父から子へ引き継がれ、成長中の胚に悪影響を及ぼす。
今後、研究チームは、精子ヒストンタンパク質が誘発する変化の治療に焦点を置き、研究を進めていくという。
(画像はプレスリリースより)

McGill
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