繰り返す流産や不妊の要因
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームは、「Nature Cell Biology」にて、エピゲノム変化(後成的変化)に異常があった初期胚を子宮移植することにより、繰り返し流産が生じ、不妊の要因になると発表した。
同大学のアマンダー・クラーク(Amander Clark)教授は、受精卵の着床・妊娠成立において、初期胚のナイーブ型・プライム型多能性幹細胞である過程が重要になると説明する。
多能性幹細胞である初期胚
受精卵(胚)の細胞は、精子と卵子の受精後から子宮内膜への着床まで未分化状態であり、生体内のあらゆる細胞・組織に分化できる多能性をもつ。着床に伴い、プライム型へと変化し、妊娠が成立する。
ナイーブ型多能性幹細胞であることにより、初期胚の分化速度は調整され、適切なタイミングでの着床を促す。それゆえ、ナイーブ型多能性幹細胞である過程の欠如は、流産の要因に成り得るという。
受精卵の着床・妊娠成立の絶対的条件
今回の研究より、初期胚のナイーブ型多能性幹細胞である過程は、着床・妊娠の絶対的条件であると立証された。
また、ナイーブ型からプライム型への変化は、DNAのクロマチン構造が起因となると特定された。クロマチン構造はDNAとタンパク質から成り、組織的に折り畳まれて細胞核内の染色体を形成する。
クラーク教授は、TFAP2C遺伝子が転写因子となってクロマチン構造が変換され、初期胚はナイーブ型からプライム型へと変化し、子宮着床に備えると説明する。したがって、TFAP2C遺伝子が欠如した初期胚は着床できず、TFAP2C遺伝子の有無により子宮への着床を予測できると結論付けている。
(画像はプレスリリースより)

UCLA Health
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