抗生物質と母子への健康影響
マードック小児研究所は、「International Journal of Epidemiology」にて、妊娠期の女性が抗生物質を服用した場合、胎児の感染症リスクが20%増加すると発表した。
抗生物質により母親の免疫機能が悪影響を受け、母から子へ感染症の発症率を高める遺伝子情報が伝達され、子供が感染症にかかりやすい状態になるという。
抗生物質と感染症リスク
研究チームは、1995年から2009年に掛けて、妊娠中の女性75万人を対象に、抗生物質の服用と胎児の感染症リスクにおける関係性を調査した。被験者のうち18%は、妊娠期にて最低1回は抗生物質が処方された。
調査結果より、誕生した子供28%(222524人)は、誕生から14歳までの期間にて感染症による入院治療歴が認められた。特に、抗生物質の服用と出産日の間隔が短い場合、感染症の発症率は増加した。
一方、妊娠前に女性が抗生物質を服用することにより免疫機能が低下し、子供の感染症リスクが10%増になったものの、妊娠前の抗生物質服用と子供の感染症リスクにおける関係性は立証されなかった。
抗生物質の影響と分娩方法
自然分娩(経膣分娩)で誕生した子供は、帝王切開と比べ、胃腸感染症の発症率が顕著に増加したと報告されている。合わせて、子供の性別における感染症の発症率では、男児の発症が多いという。
母親の胎内にいる胎児は無菌状態であり、自然分娩にて産道を通る際に胎児は母親から腸内細菌を引き継ぐといわれる。抗生物質の服用は、善玉菌(良い腸内細菌)を減少させ、腸内バランスは崩れる。腸内環境の悪化は、免疫システムの発達に悪影響を及ぼす。
それゆえ、母親の腸内環境悪化は、子供の腸内環境や免疫システムを変化させる傾向にあり、子供が感染症を発症しやすい状態になるという。
しかしながら、デービッド・バーゲナー(David Burgner)氏は、研究目的が抗生物質の服用を否定するものではないと強調する。子への健康影響を考慮したうえで、必要最低限の処方・服用を推奨する。
(画像はPixabayより)

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