早産と胎児脳
イリノイ大学の研究チームは、「eNeuro」にて、妊娠後期(28~40週)の早産により胎児脳の聴覚野は影響を受け、発達を遅らす要因になると発表した。
これまで、複数の先行研究では在胎数週と胎児の聴覚における関係性に着目し、例えば、胎児は胎内子宮音など子宮内で聞いている音とは異なる音に興味があり、話し声や音楽を好むことが判明した。
また、超音波検査より、妊娠25週前後の胎児は外部の音に反応して手足を動かす、まばたきすることが確認できている。
しかしながら、同大学のブライアン・モンソン(Brian Monson)教授は、胎児の傾聴力や学習能力に関する研究は行われていなかったと説明する。
早産児と満期産児の脳発達
今回、研究チームは、2007年から2010年に掛けて、セントルイス小児病院新生児集中治療室(NICU)の早産児90人を対象に、早産と胎児の傾聴力や学習能力における関係性について調査した。
NICUの早産児、バーンズ・ユダヤ病院の満期産児15人に対して、頭部MRI検査にて生後1日から4日目までの脳画像を撮影した。頭部MRI検査では、脳組織に含まれる水分の性質、流れを画像化することにより、神経細胞や神経繊維の発達を判断できる。
脳画像より早産児と満期産児における脳の発達を対比したところ、早産児の一次聴覚野と二次・三次聴覚野は発達速度・度合いが異なることが認められた。在胎期間が短く、脳が十分に成長できず、脆弱であったという。
モンソン教授は、妊娠26週以前の早産において、一次聴覚野の発達段階は、二次・三次聴覚野と比べ、遥かに進行していたと説明する。一方、妊娠26週以降の早産であった場合、二次・三次聴覚野は、一次聴覚野の発達速度を追い越し、成熟していた。
聴覚野の発達と言語障害
研究チームは、二次・三次次聴覚野の発達が遅れている場合、2歳には言葉の遅れなど言語障害の症状が認められるとも報告している。
一次聴覚野は、耳が感知した聴覚信号を最初に受け取る大脳皮質の領域である。聴覚(音)情報の処理を担い、音の高低、音量を見極める。二次聴覚野は音のメロディ、リズム、ハーモニーを認識し、三次聴覚野にて音を統合して全体的に処理するといわれる。
モンソン教授は、今後、早産児の脳検査より、言語障害になる可能性を早期に発見し、対処できると期待する。
(画像はプレスリリースより)

ILLINOIS.EDU
https://news.illinois.edu/view/6367/600667