鉛中毒と子癇前症
グリフィス大学(オーストラリア・クイーンズランド州)の研究チームは、「Environmental Research」にて、鉛中毒が子癇前症(しかんぜんしょう:妊娠20週以後の高血圧、タンパク尿、浮腫・むくみ)の主な危険因子であると発表した。
世界における子癇前症による死亡者数は年間7万5,000人以上であり、妊娠期の最も多い死因であるといわれる。また、死産の要因にて9%を占める。
先行研究11件によるデータ分析
これまで、妊娠している女性の体内に高濃度の鉛が蓄積し、鉛中毒になった場合、胎児の健康に大きな影響を与えることは知られていた。
今回の研究では、11件の先行研究結果より臨床試験データを収集し、分析を行った。先行研究では、妊娠期に子癇前症の症状が現れた女性、子癇前症にならなかった女性を対象に、血中鉛濃度を測定し、対比している。
同大学のアーサー・ポロパット(Arthur Poropat)博士は、先行研究に基づく臨床試験のデータ分析より、血中鉛濃度が2倍になると子癇前症の発症リスクは2倍に高まり、血中鉛濃度と子癇前症に関連性が認められたと述べている。
ロイヤルメルボルン工科大学のマーク・レイドロー(Mark Laidlaw)博士は、鉛中毒が子癇前症の発症リスクを最も高める要因であると補足する。
妊娠期の血中鉛濃度が1デシリットルあたり5マイクログラムである場合、子癇前症の予備軍になるという。また、妊娠期に血中鉛濃度が高く、鉛中毒である場合、糖尿病の発症リスクが2倍になったと報告されている。
鉛中毒になる原因と予防とは
日常生活や仕事を通して、鉛を吸引、摂取する可能性がある。
例えば、鉛塗料を塗る、鉛汚染土壌を歩く、鉛製水道管から流れる水を飲む、鉛製衣料を洗った泡に触れるなど粉塵を吸入し、摂取することにより鉛が体内に吸収されて蓄積する。蓄積した鉛は血中の鉛濃度が高くし、中毒症状を引き起こす。
また、体内に吸収された鉛の90~95%は骨に蓄積される。特に、女性の骨は妊娠期にて胎児のカルシウム源となり、母子の健康に悪影響を与えることになる。
ポロパット博士は、妊娠期の高血圧は骨に蓄積された鉛を体外へ排出することが理由であると説明する。また、血圧の降下、血中鉛濃度の低下にはカルシウムが効果的であるとし、妊娠期におけるカルシウムのサプリメント摂取を推奨する。
(画像はプレスリリースより)

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