子癇前症の要因とは
マックス・デルブリュック分子医学センター(ドイツ・ベルリン)は、「Circulation」にて、子癇前症(しかんぜんしょう:妊娠20週以後の高血圧、タンパク尿、浮腫・むくみ)が遺伝子を要因とする単一疾患ではなく、胎盤のエピジェネティック制御遺伝子「DLX5遺伝子」の異常により生じると発表した。
胎盤における異常な遺伝子の活性・発現
研究チームが子癇前症の症状がある女性と健康な女性より胎盤組織サンプルと遺伝物質を採取して、子癇前症におけるゲノムインプリンティング(ゲノム刷り込み)を検証したところ、子癇前症である場合、胎盤にある遺伝子の発現が異なることが認められた。
ゲノムインプリンティング(ゲノム刷り込み)は、母由来の遺伝子と父由来の遺伝子が異なる発現レベルを示す現象である。
子癇前症の70%が、ゲノムインプリンティングによりエピジェネティック制御遺伝子「DLX5遺伝子」の制御機能が活性化され、遺伝子の活性・発現が異常に促されていたことが判明した。
通常、胎盤にある遺伝子の活性・発現は、父由来のDLX5遺伝子により制御され、遺伝子量が適量に保たれる。それゆえ、DLX5遺伝子がもつ制御機能が欠如した場合、遺伝子の発現量は必要以上に増加する。
今後の展望
合わせて、研究チームは、子癇前症の分離型3種類を発見した。分離型が、子癇前症を複雑な症状にするという。また、生体外にて、DLX5遺伝子の制御機能が増した子癇前症の遺伝子モデル発現に成功した。
遺伝子モデルの擬似により、今後、子癇前症における治療法や予防策の確立を期待できる。
(画像はプレスリリースより)

MDC
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