ステロイドによる不妊治療の危険性
アデレード大学(オーストラリア)の研究チームは、不妊治療の専門家や不妊治療を受ける女性に対して、自己免疫疾患など臨床的に必要な場合を除き、ステロイドによる不妊治療を控えるように発表した。
サラ・ロバートソン (Sarah Robertson)教授が率いる研究チームは、「Human Reproduction」にて、プレドニゾロンなどステロイド剤は不妊治療において幅広く使用されているが、安全性が保証されている訳ではないと述べている。
ステロイドには、流産や早産、先天性異常を引き起こす危険性があり、受精卵移植を妨げ、妊婦や胎児に悪影響を与えるという。
不妊治療におけるステロイド使用の目的
近年、体外受精の失敗や流産を繰り返す女性に対して、免疫細胞「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」の働きを抑える為、ステロイド剤による治療が増加している。
NK細胞の活性化が高い場合、胚(受精卵)や胎盤、胎児は異物とみなされて攻撃され、体外受精の失敗や流産のリスクが高まるといわれる。そのため、NK細胞の働きを抑えることにより、妊娠の可能性が高まると考えられている。
免疫細胞の働き
一方、ロバートソン教授は、ステロイドには免疫抑制剤の効果があり、身体の免疫システムが妊娠に伴い変化することを妨げると指摘する。
NK細胞や免疫細胞には、健康な胎盤の形成や胎児発育を促す働きがある。ステロイドなどの使用により免疫システムを抑制すると、胎盤は正常に機能しなくなり、流産や早産、先天性異常の危険性が高まるという。
妊娠初期の3ヶ月間、ステロイドを服用した場合、流産のリスクは64%増加し、早産のリスクは2倍になったと報告されている。また、先天性異常である口蓋(こうがい)裂のリスクが3~4倍になったという。
(画像はイメージです)

The University of Adelaide
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