約12年の調査で判明
女性ホルモンのエストロゲンは、乳がんに大きな影響を与えることで知られていますが、英医学誌「ランセット・オンコロジー」(電子版)に、『エストロゲンには、予防の働きもある可能性がある』という論文が掲載されたそうです。
論文は、1990年代から2000年代にかけて、閉経後の女性の疾病や障害について調査するために行われた臨床試験「ウィメンズ・ヘルス・イニシアチブ(WHI)」について報告されています。
エストロゲン剤服用で、乳がん発症率はより低く
この臨床試験では、まず、子宮摘出手術を受けていた被験女性で、米ファイザーが販売するエストロゲン剤「プレマリン」もしくは、プラセボ(偽薬)のいずれかを、約6年(中央値)にわたり服用した7645人を約12年(中央値)調査。
その結果、エストロゲン剤「プレマリン」を服用の場合は、プラセボ(偽薬)を服用している場合より、乳がん発症率が23%、乳がんを発症した場合の死亡率が63%低い結果が出たそうです。
本来は、エストロゲン剤「プレマリン」の調査を、2005年まで行う予定だったそうですが、脳卒中発症のリスクが高まるとして、2004年に打ち切られました。
乳がんの予防を目的に使用すべきでない
また、子宮摘出手術を受けていない更年期の被験女性に対し、エストロゲンと黄体ホルモン類似物質プロゲスチンの合成剤「プレンプロ」(ファイザー)を服用しての臨床試験も行われましたが、乳がんの発症リスクが高まるとして、2002年に中止されたそうです。
WHIクリニカル・コーディネーティング・センター主任研究員のガーネット・アンダーソン氏は
エストロゲンによって子宮を摘出した女性のがん発症率が低下する理由は不明
としながら
エストロゲンは顔面紅潮などの更年期障害の緩和のみに用いるべきで、まだ乳がんの予防を目的に使用すべきでない
としています。なお、英マンチェスター大学のアンソニー・ハウエル教授は、
エストロゲンの効用が50代の更年期障害の女性で最大となることが示された
とし、さらに
より高齢の女性への使用は脳卒中や心臓発作の発症率を高める危険があるため避けるべきだ
と指摘しながら、
「女性に安心感を与える結果であることは明らかだ」
としています。

SankeiBiz
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/120324/cpd1203240503000-n1.htm