妊娠期の肥満によるリスク
アメリカ生理学会(APS)発行の「American Journal of Physiology-Lung Cellular and Molecular Physiology」では、妊娠期の肥満が胎児肺の発達に対して否定的な影響を与えると発表した。
妊娠期に太り過ぎ・肥満であった母親から誕生した子供は、母親の胎内にて適量の界面活性剤を生成できず、不足し、呼吸状態が、再発性肺感染症(肺炎、肺真菌症、肺化膿症、肺結核、非結核性抗酸菌症など病原微生物による肺の疾患)、喘息を含む慢性肺疾患に類似した状態になりやすいという。
界面活性剤の役割
胎児は、母親の胎内にて、肺にて界面活性剤である肺表面活性物質(肺サーファクタント)を生成している。息を吸うと肺全体が膨らみ、肺胞には空気が入り、酸素を取り込める。界面活性剤は肺胞の空気が入る側にて分泌され、肺胞の膨張を促す。
妊娠期の母親が太り過ぎ・肥満であった場合、母親の脂肪細胞から作り出されるレプチン量が過剰になる。レプチンは食欲を制御するが、血管新生(既存の血管から新たな血管枝が分岐して血管網を構築する生理的現象)を阻害する。
肺の発達において、血管新生は非常に重要な役割を担い、それゆえ、血管新生の妨害は胚の発達および機能に対して永久的に悪影響を及ぼすといえる。
妊娠期・授乳期の肥満と子供への影響
オハイオ州立大学の研究チームは、マウスを用いた動物モデル実験を行い、妊娠期・授乳期の母マウスに対して高脂肪の食事を与え、子マウスへの影響を検証した。
離乳後の子マウスに対して肺機能の検査、肺細胞の分析を行ったところ、母マウスが妊娠期・授乳期に高脂肪の食事を摂取した場合、子マウスではレプチン量、炎症細胞の増加が認められた。また、子マウスの血管新生と肺胞は少なく、肺胞の機能は低くなった。
研究チームは、妊娠期の母親が肥満状態であると子供の肺は発達が妨げられ、機能は低くなると結論付ける。
(画像はPixabayより)

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