音楽による効果
ジュネーブ大学とジュネーブ大学病院の研究チームは、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」にて、音楽には、早産児の脳内にある神経回路網を発達させる効果があると発表した。
新生児医学の発展に伴い、より多くの早産児の命が助かるようになったが、一方、依然として、早産児の神経心理学的障害リスク(学習困難症、注意障害、情緒障害など)は高い。
誕生時、早産児の脳は未熟な状態であり、産後も引き続き、新生児特定集中治療にて胎児脳を成長させる必要がある。しかしながら、保育器は母親の子宮と非常に異なる環境であり、脳内神経回路網が正常に発達できない可能性も少なくないという。
音楽と脳内神経回路網の発達における関係性
研究チームは、ジュネーブ大学病院の新生児特定集中治療にいる早産児を対象に、音楽と脳内神経回路網の発達における関係性を検証した。
早産児は通常ならば母親の胎内にて過ごす期間に誕生し、ドアの開閉音、アラーム音などのストレス過剰な刺激を受けるが、環境に適合した刺激は全くない。それゆえ、早産児を取り巻く環境を心地良くする、ヒーリング効果がある刺激が必要であると考え、早産児に音楽を聴かせた。
なお、今回の研究に使用した音楽は、スイス人の作曲家アンドレアス・フォレンヴァイダー(Andreas Vollenweider)氏によって作曲された。フォレンヴァイダー氏は、睡眠、覚醒などの状態に合わせて複数の楽器を駆使し、早産児向けの音楽を作り上げた。
MRIにて早産児の脳画像を撮影したところ、音楽を聴いていた早産児は、音楽を聴いていない早産児と比べ、特に、感覚機能および認知機能に関与するネットワークの発達が早いことが認められた。なかでも、サリエンス・ネットワークが最も音楽の影響を受け、他領域の活動を活性化させたと報告されている。
(画像はプレスリリースより)

UNIVERSITE DE GENEVE
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