母体年齢による影響
アメリカ人の研究者らは、「American Journal of Obstetrics and Gynecology」にて、体外受精における胚着床、流産リスクに対して、母体年齢は影響を与えないと発表した。
母体年齢と生殖能力
これまで、複数の先行研究は、母体年齢の増加により生殖能力が低下すると報告されてきた。母体年齢が上昇すると卵母細胞の数が減り、染色体数的異常(通常の染色体本数とは異なり、本数が過剰・不足している染色体)が増えるという。
30歳以降の女性の場合、染色体数的異常の確率は高まり、44歳までには88.2%に達するといわれる。染色体数的異常の胚は子宮へ着床しにくく、着床率は下がり、生殖能力は衰退する。
しかしながら、今回の研究では、女性の年齢増加に伴い、健康な胚は減るが、一方、質の高い胚を用いた場合、母体年齢は体外受精の胚着床率や出産率に影響しないことが認められた。
母体年齢と体外受精の着床率・出生率における関係性
研究チームが、複数の医療機関にて、凍結胚を用いた胚移植785サイクルを実施し、胚盤胞870個を子宮へ移植した。
胚(受精卵)は、受精から5日目、あるいは6日目に胚盤胞へと発育する。被験者の女性は4グループ(35歳以下、35~37歳、38~40歳、41~42歳)に分類され、体外受精の着床率を比較した。
胚の質を比較したところ、最良の胚は、最も高い着床率・出生率であった。最良の胚では出生率が79%であり、良質な胚の出生率(64%)と比べ、顕著に高くなった。一方、質の悪い胚における出生率は28%となり、胚の質によって大きく異なった。
また、胚の染色体数が正常である場合、着床率と母体年齢は関係ないことが認められた。合わせて、胚の形状・構造・成長速度は、着床率に対して影響は与えなかった。
研究チームは、母体年齢の増加に伴い、正常な染色体数の胚は減少傾向にあるが、正常な染色体数を用いた体外受精の着床率や出生率は大差なく、母体年齢による影響は受けないと結論付けている。
(画像はPixabayより)

AJOC
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