地球の気候変動による影響
リンカーン大学(イギリス)の研究チームは、「Journal of Evolutionary Biology」にて、地球の気候変動は哺乳類の生殖能力に対して悪影響を及ぼし、精子生産を阻害すると発表した。
同大学のグラツィエッラ・イオッサ(Graziella Iossa)博士は、動物の住環境における気温が生殖行動と生理学に大きく影響すると説明する。
精子形成は、卵子形成と比べ、熱ストレスの影響を受けやすい。哺乳類の精子生産は気温による影響を受け、猛暑・酷暑など極端な高温により精子生産量は減少し、男性不妊を引き起こす要因になるという。
気温上昇と精子生産
研究チームは、ノシメマダラメイガを用いた実験を行い、住環境の気温と精子生産における関係性を検証した。
気温20度から33度までの環境にて数ヶ月間、ノシメマダラメイガを飼育したところ、高温下では、精子の生存期間が短くなった。
また、精子は住環境の気温による影響を受け、受精能力のある精子と受精能力のない精子が生産された。気温の上昇に伴い、受精能力のない精子数は増加した。
イオッサ博士は、精子の性質や男性性器の構造より、住環境の気温上昇と精子生産量の減少における因果関係は明確であると述べる。
精子と卵子の耐熱性は異なり、精子は熱に弱く、体温が極端に上昇すると損傷を受けやすい。それゆえ、男性性器は、身体の外から見える外性器と骨盤の中にある内性器から成り立ち、精子を生産する部分は身体外にある。
住環境の気温と繁殖行為
今回の実験を通して、住環境の気温が雄・雌の生殖機能に対して影響を与え、最低・最高気温下では繁殖行為をしない傾向も認められた。
先行研究では、過剰なストレスを受けると生殖能力、妊娠可能性が低下すると報告されている。研究チームは、気候変動により熱ストレスに対する身体の適応力が変化し、繁殖行為が減少すると推測する。
(画像はプレスリリースより)

UNIVERSITY OF LINCOLN
https://www.lincoln.ac.uk/news/2019/04/1530.asp