精子の遊泳能力と精子尾
ヨーク大学とオックスフォード大学の研究チームは、ヒト精子が、精子尾の表面を覆い、補強する外層によって力強く、律動的なストロークで遊泳でき、子宮入口にある子宮頚管粘液を通過して子宮内へ到達できると発表した。
子宮頚管粘液は粘性が高いが、現在、医療機関は、体外受精の精子選択において高粘着性の液体を用いていない。研究結果は、子宮環境に近い状況下にて体外受精における精子選択を行うことにより、選択の精度、体外受精の成功率は高まると示唆する。
液体の粘性に適した遊泳
研究チームは、精子尾のバーチャルモデルを作製してヒト、他の哺乳類を比較した。異なる種の精子尾をウニの精子に追加・排除し、精子尾の機能について検証した。合わせて、ウニの精子を海水に放出し、体内・体外での受精を促した。
ヒト、ウニの精子は類似し、精子尾の補強外層には共通の構造をもち、子宮頚管粘液の突破に必要な遊泳能力は同じであるといわれる。
子宮頚管粘液の粘性と同程度である液体において、ウニの精子尾は圧力に屈し、前へ進むことはできなかった。一方、ヒト精子の場合、粘性の低い液体下では尾を左右に広く動かし、鞭のように打ちながら進み、粘性の高い子宮頚管粘液内では、力強く、律動的なウェーブを作りながら遊泳した。
同大学数学科のエルメス・ガデーリャ(Hermes Gadêlha)博士は、バーチャルモデルにより、精子が液体の粘性に適した遊泳をしていることが認められたと述べる。
また、メカニズムは十分に理解されていないが、精子の遊泳能力は遺伝的整合性に関係があるとし、子宮頚管は女性の身体においてプロセスの一部を形成し、最も優れた遊泳能力をもつ精子のみが卵子に到達することが許されると説明する。
(画像はプレスリリースより)

URLUNIVERSITY of York
https://www.york.ac.uk/ BioNews
https://www.bionews.org.uk/page_142129