甲状腺ホルモン剤と出生率
バーミンガム大学の研究チームは3月23日、米国内分泌学会「ENDO 2019」(3月23~26日、米国ニューオーリンズで開催)にて、妊娠前から甲状腺自己抗体であり、甲状腺ホルモン剤「レボチロキシン」による治療を行っている場合、出生率が増加することはないと発表した。
同大学のリマ・ディロン=スミス(Rima Dhillon-Smith)教授は、正常な甲状腺機能であるものの甲状腺に異常があって妊娠前からレボチロキシン治療を開始し、流産や不妊を経験している女性は、出生率は改善しないと述べる。
これまで、先行研究より、レボチロキシン治療には甲状腺異常の女性に対して効果があると報告されていた。それゆえ、今回の研究結果は、驚くべき結果である。なお、研究結果は「The New England Journal of Medicine」に掲載される。
甲状腺自己抗体とは
甲状腺自己抗体とは自己免疫性甲状腺疾患であり、甲状腺の成分を抗原とする。自己免疫性甲状腺疾患には、橋本病、バセドウ病などが含まれる。
甲状腺自己抗体は血液内に検知され、流産や早産のリスクを高めるといわれる。
レボチロキシン剤と出生率における関係性
研究チームは、2011年から2016年に掛けて、イギリスの49医療機関にて、甲状腺機能は正常であるが甲状腺自己抗体が陽性である女性(16~41歳)を対象に、レボチロキシン剤と出生率における関係性を検証した。
被験者のうち470人は妊娠34週以上にレボチロキシン剤50mcgを服用した。被験者は、妊娠前から妊娠終了まで甲状腺自己抗体の治療を受け、流産や女性不妊の経験がある。
レボチロキシン剤を服用した女性グループにおいて、妊娠が成立した女性は56.6%(470人中266人)であったが、出産に至ったのは37.4%(176人)であった。一方、レボチロキシン剤を服用していない場合、妊娠成立は58.3%(470人中274人)、出産率は37.9%(178人)であった。
また、レボチロキシン剤の服用有無に関わらず、妊娠損失、早産などを含めた妊娠結果も大差なかった。
ディロン・スミス教授は、研究結果を受け、甲状腺自己抗体に対するレボチロキシン治療は、出生率に与える効果は最小であると結論付ける。
(画像はENDOCRINE SOCIETY HPより)

ENDOCRINE SOCIETY
https://www.endocrine.org/NEWS MEDICAL
https://www.news-medical.net/