胎盤の機能
ケンブリッジ大学の研究チームは、「Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)」にて、マウスを用いた動物モデル実験を通して、胎盤が、母体の健康状態に応じて、母から胎児へ送る酸素・栄養量を調整すると発表した。
例えば、妊娠期の母親が栄養バランスのとれた食事を十分に摂取できない、低酸素状態である場合、胎盤は、母から胎児へ送る酸素・栄養量を減らすという。
マウス胎盤とミトコンドリアの胎児に対する影響
研究チームは、マウスを用いた動物モデル実験を行い、母体の健康状態と胎盤ミトコンドリアの機能変化、母から子へ受け渡される酸素・栄養量における関係性について検証した。
ミトコンドリアは、身体の大部分の細胞に含まれる。酸素を使い、糖や脂質からエネルギーを作り出す。
マウス胎盤細胞のミトコンドリアを分析したところ、母親の健康状態に応じて、胎児に送る酸素・栄養量が制限されることが確認された。
アマンダ・N・スフェルツィ・ペリ(Amanda N Sferruzzi-Perri)博士は、妊娠期の母親が食事より栄養を十分に吸収できない、標高2500m以上(ボリビア、ペルー、チベット、エチオピアなど)にて生活するなど、ミトコンドリアには母親の環境影響に適合し、補填する能力が顕著に認められたと述べる。
母親の健康状態・生活環境により妊娠継続が困難である場合、胎盤は正常に機能せず、流産、子癇前症、胎児発育遅延の要因になる。胎児発育遅延は死産、脳性麻痺、行動障害、発達障害、神経障害・疾患、心臓病や肥満などの慢性疾患を引き起こす。
研究チームは、ミトコンドリアが、胎盤の機能を決定する重要な要素であり、健康で無事な出産を迎えるには母体の健康状態や妊娠環境を改善し、ミトコンドリアや胎盤の機能を正常に保つ必要があると結論付けている。
(画像はプレスリリースより)

ST JOHN’S COLLEGE UNIVERSITY OF CAMBRIDGE
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