腹膜液内の成分による影響
シンガポール国立大学の研究チームは、「Fertility and Sterility」にて、腹膜液(腹膜液)内の脂肪分子「セラミド」が増加すると、子宮内膜症による不妊を引き超す要因になると発表した。
腹腔には腹膜液があり、潤滑油的な働きを果たし、感染時の防御機構となる。また、腹膜液は卵巣と接触し、適切な卵母細胞の発達を促す。
腹膜液に含まれるセラミドはスフィンゴ脂質の一種であり、細胞膜構造・機能にとって重要になる。しかしながら、腹膜内のセラミドなどスフィンゴ脂質量が増加すると、卵母細胞、受精卵(胚)の成熟・成長を妨げるという。
子宮内膜症と腹膜液の成分
研究チームは、子宮内膜症を起因とした不妊の女性27人、他要因を起因とした不妊の女性20人を対象に腹膜液を採取し、成分を分析した。深刻な子宮内膜症の女性13人は、他要因の女性不妊と比べ、腹膜液に含まれる8種類のセラミド量が著しく増加していた。
セラミドは、ミトコンドリア内にて超酸化物を増加させ、酸化ストレス(酸化反応による有害作用であり、体内の酸化還元における均衡が崩れた状態)を生じさせる。結果、卵母細胞の成熟は阻まれる。一方、超酸化物が卵母細胞に悪影響を与える量以下に減少すると、卵母細胞の成熟・成長に不可欠な要素となる。
研究チームは、子宮内膜症に伴う不妊治療において、セラミドなどスフィンゴ脂質量と卵母細胞の成長における関係性を活用できることを期待している。
(画像はPixabayより)

Fertility and Sterility
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