糖尿病検査による妊娠糖尿病の診断
国立衛生研究所(NIH)傘下の国立小児保健発達研究所(NICHD)は、「Scientific Reports」にて、妊娠糖尿病の診断に糖尿病検査「HbA1c」が活用でき、妊娠10週までの検査により妊娠糖尿病の早期発見が可能になると発表した。
HbA1cは、糖尿病の診断に用いられる。血液を採取して赤血球中のヘモグロビンに付着している糖分の割合を測り、糖尿病を診断する。
妊娠糖尿病と母子の健康リスク
妊娠糖尿病とは、妊娠期のみに発症する。母親の血糖値、血中グルコース(ブドウ糖)量が上昇し、母親は妊娠高血圧、循環器疾患リスクが高まる。また、母親が妊娠糖尿病である場合、胎児は標準より大きく成長し、帝王切開による分娩となる。
基本的に、妊娠糖尿病のスクリーニング検査は、妊娠中期(妊娠24~28週)女性に対して行われている。
妊娠初期における糖尿病検査の有益性
研究チームは、胎児の成長調査「NICHD Fetal Growth Study」を分析し、妊娠糖尿病の診断におけるHbA1cの有益性を検証した。調査は、2009年から2013年に掛けて、アメリカ国内12医療機関にて、健康リスクの低い妊娠期の女性2000人以上を対象に実施された。
大半の被験者は、妊娠糖尿病検査を妊娠期に4回 (初期8~13週、中期16~22週と24~29週、後期34~37週) 受けた。検査結果より、妊娠糖尿病の女性は、妊娠糖尿病でない女性と比べ、HbA1c値が高いことが認められた。特に、妊娠初期では、HbA1c値0.1%上昇につき5.1%増になり、妊娠糖尿病率は22倍であった。
一方、妊娠中期では、妊娠糖尿病の有無に関わらず、HbA1c値が低下した。しかしながら、妊娠糖尿病である場合、妊娠後期になるとHbA1c値は上昇した。
同機関のクィリン・チャン(Cuilin Zhan)氏は、妊娠初期にHbA1cを実施することにより、妊娠糖尿病の早期発見・診断が可能になると結論付けている。妊娠糖尿病は、早期治療(インスリン注射、食事管理、運動療法)にて母子の健康リスクが大きく変わり、症状をコントロールできると説明する。
(画像はPixabayより)
NIH
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