正常な人工多能性幹細胞の生成
南開大学(中国)の研究チームは、「Cell Reports」(12月24日)にて、マウスの顆粒膜細胞にRock阻害薬とクロトン酸の混合物を注入することにより、顆粒膜細胞が機能性卵母細胞へと変化したと発表した。また、機能性卵母細胞と精子を受精させたところ、自然妊娠にて誕生した子マウスと変わりない、健康な子マウスが誕生したと報告された。
不妊治療に有益な発見
卵胞は卵巣にある球状の細胞の集合体であり、卵母細胞より成るが、未熟な卵母細胞は顆粒膜細胞によって取り囲まれる。顆粒膜細胞は卵胞の発達において極めて重要であるうえ、幹細胞のような特性を示す可塑性をもつ。
しかしながら、体外受精において、卵子の採取後、卵胞の顆粒膜細胞は、卵胞から取り除かれると細胞死および分化を起こす傾向があるゆえ、破棄される。
今回、研究チームは、顆粒膜細胞にRock阻害薬とクロトン酸の混合物を注入し、化学的に人工多能性幹細胞(CiPSCs)の生成に成功した。Rock阻害薬は細胞死を防ぎ、拡散を促進する。クロトン酸と混合することにより、クロトン酸は顆粒膜細胞を胚性幹細胞に類似した多能性を示す多能性幹細胞への変化を促す。
通常、人工多能性生殖細胞の能力は、胚性幹細胞と比べて低い。生殖細胞の能力は、生殖細胞が遺伝情報を次世代に伝達するうえで重要である。それゆえ、Rock阻害薬とクロトン酸の混合物による人工多能性幹細胞は、非常に有益かつ質も高い。
また、Rock阻害薬とビタミンCを注入することにより、卵胞の発達を改善し、減数分裂を誘発する人工多能性生殖細胞が生成された。生殖細胞と卵母細胞は顆粒膜細胞から回復し、高いゲノム安定性を示し、正常な生殖能力をもつ子が誕生した。
(画像はCell Reportsより)

Cell Reports
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