40歳以上での採卵は推奨せず
婦人科医ら生殖医療の専門家で構成する「日本生殖医学会」(理事長・吉村泰典慶応大学医学部産婦人科教授)は13日、明確なルールがないまま、医師の判断で行われていた、健康な女性たちの「卵子凍結」をめぐって、健康な未婚女性にも卵子凍結を認めるなどとした日本初のガイドラインを了承した。
卵子凍結は、女性の体内から摂取した卵子を急速冷凍して保存し、必要に応じて解凍して体外受精に使う不妊治療で、これまで不妊治療中の既婚女性や、がんなどの放射線治療で卵巣機能が低下するおそれのある一部の女性に限って認められてきた。
しかしながら、最近では、年齢が上がるにつれ、妊娠しにくくなる「卵子の老化」現象が広く知られるようになり、独身女性の間では将来の妊娠に備え、若いうちに卵子を凍結して保存したいという動き「卵活」が広がりだしている。さらに、卵子凍結をする場合、採取時に数十万、保管料に年間数万円もかかることから、高額な費用を請求されるケースも考えられる。このような問題に対処するためにも、一定のガイドラインを設ける必要性が出てきたのだ。
13日にまとめられたガイドラインでは
▽採卵時の年齢は、40歳以上は推奨できない▽凍結した卵子による妊娠についても、45歳以上は推奨できない▽実施施設は事前の認定制とし、実績の報告を義務づける▽採卵や凍結卵子を使った不妊治療の方法や危険性、妊娠の可能性、費用などを十分説明し、本人の同意を得る―などを定めた。
凍結卵子での出産成功率は10%
しかしながら、健康な未婚女性による「卵子凍結」が認められたからといって、手放しで喜んではいられない。採卵時には、卵巣の腫れや出血といったリスクをともない、卵子の保存期間が長くなれば、その分、コストは膨らむからだ。
日本産科婦人科学会によれば、これまで、凍結卵子での出産成功率はおよそ10%だという。若いうちに卵子を保存しておけば、高齢でも出産できるといった認識は謝りなのだ。
凍結保存しておけば、理論上、卵子は老化しないが、母体は確実に衰えていく。高齢出産による分娩(ぶんべん)のリスクが高いのは、変わらない事実だということを忘れてはならない。

日本生殖医学会
http://www.jsrm.or.jp/index.html