国民の意見を募集
日本産科婦人科学会は、「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」指針(案)を公表し、あわせて、国民からのパブリックコメントの募集を、平成24年12月17日(月)から平成25年1月21日(月)まで行うと発表しました。
指針については、国民からの意見と検討を踏まえて確定となり、平成25年3月以降に決定される見通しです。
「新出生前診断」は、例えば羊水検査の場合300人に1人の割合で流産をする可能性があると言われていますが、そのようなリスクがなく、母体血から胎児の染色体の数的異常診断ができるため、海外では普及が広まっています。
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施設を限定して実施
「採血で自分の子どもに異常がないか分かるし、何のリスクもないのなら、取りあえず受けておこうかな。」そう思ってしまうほど、簡単に検査ができてしまう「新出生前診断」。
でも、もし異常があったら。何の心の準備もなく診断を受けて、異常があった場合、その精神的ダメージは非常に大きいに違いありません。
そうならないために、日本産科婦人科学会では、指針を作製。今回の案では、「新出生前診断」を行う施設を
・遺伝子専門カウンセリングを受ける態勢が整っている
・検査後の妊娠経過もその施設で続ける事が可能なこと。
・出生後の医療やケアを実施できる施設
など、どんな結果でも、万全の態勢で夫婦をサポートできる施設で行うよう限定しています。
検査対象となる母体にも基準
また、指針案では、対象となる母体にも基準を設けています。
・高齢妊娠の者(出産時に満 35 歳を迎えている者)。
・胎児超音波検査で胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された者。
・染色体数的異常を有する児を妊娠した既往のある者。
・妊娠前期(第 1 トリメスター)に受けた血清マーカー検査で、染色体数的異常を有する可能性を示唆されたもの。
・両親のいずれかが均衡型ロバートソン転座を有していて、胎児が 13 トリソミーまたは 21 トリソミーとなる可能性が示唆される者。
なお、「新出生前診断」は、特定の染色体(13 番、18 番、21 番)について、胎児に異常があるかどうかの可能性について診断しますが、診断の確定には羊水検査が必要となります。
現在その精度の高さのみに関心が行っていますが、「新出生前診断」は確定診断ではありません。そのため、学会では、「新出生前診断」の結果のみで、妊婦が誤った判断をする可能性もあるとしており、検査を受ける前にしっかりとした認識を持つ必要があるとしています。
何が正しいのか、間違えているのか、“人ひとりの命”がかかっているだけに、答えを導き出すことができないこの問題。数多くの意見が集まることで、何か見えてくるのかも知れません。

日本産科婦人科学会
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20121217.html母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針(案)
http://www.jsog.or.jp/news/pdf/