不妊症や水頭症を司る繊毛の謎
生き物は交配し、子孫を残すという役割を担って生まれてくる。現在急激に発展している不妊治療も、正にその延長といえるだろう。
メスの哺乳類の卵管には5-10マイクロメートルほどのごく短い「繊毛(せんもう)」と呼ばれる毛が生えている。この毛は動き、卵巣から子宮へ卵子を運んでいる。つまり、この繊毛がなければ、妊娠は有り得ない。
そして、その繊毛は長くても短くても、運動に支障が出て、水頭症や不妊症を引き起こす原因となるという。
均一に保たれるメカニズムとは?
繊毛の長さが一定に保たれていることに、なんらかのメカニズムがあるのでは、と50年ほど前から言われてきた。そして今回、その謎の一部が解明されたという。
東京大学大学院医学系研究科の廣川信隆特任教授、丹羽伸介特任研究員らが、繊毛の先端を切りそろえるハサミの役割をするたんぱく質を発見したのだ。
今回の研究結果は今後、水頭症や不妊症、遺伝子診断や遺伝子治療、リスクの予測や予防などに役立つ可能性がある。
研究論文“KIF19A is a microtubule-depolymerizing kinesin for ciliary length control”は、11月15日付のアメリカ分子生物学誌「Developmental Cell」のオンライン版にて発表された。

東京大学プレスリリース
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