DNA損傷が子どもへ受け継がれる
生物学に関する研究結果をまとめた雑誌「The FASEB Journal」にて先月発表されたところによると、受精した頃に男性が喫煙していると、喫煙によって損傷した男性のDNAが、やがて産まれてくる子どもに受け継がれてしまう可能性があるということが判明しました。そしてその結果、子どもが癌などの遺伝性疾患を発症するリスクが高まってしまうとのことです。
研究の内容は?
過去のマウスを使った実験では、雄のマウスがたばこの煙にさらされることによって、その後産まれてきた子どものマウスにDNA損傷が見られるという結果が出ています。今回の研究では、初めて人間を対象に「父親の喫煙」と「子どものDNA損傷」との関係が探られました。
この研究を率いたのは、イギリス・ブラッドフォード大学の教授であるDiana Anderson氏です。研究チームはまず、イギリスとギリシャの39の家庭を対象としてアンケートを行い、DNAに影響を与える可能性がある、喫煙・飲酒・ダイエットなどのライフスタイルや職業・住環境などについて、様々な情報を集めました。
そして、受精した頃の父親の血液・精液、それから出生時の母親の血液とへその緒の血液において、2種類のバイオマーカー(ある疾病の存在や進行度をその濃度に反映し、健康状態の指標となるもの)を用いてDNA損傷の状態が調べられました。
そして、アンケートで調べた様々な環境要因の中でも何がDNA損傷を引き起こしているかをはっきりと区別するために、環境要因とバイオマーカーによる複合解析が行われました。すると、「受精時期の父親の喫煙」と「新生児のDNA損傷」には強い相関関係が見られたとのことです。
3ヶ月以上前から禁煙を!
この研究に携わったブラッドフォード大学のJulian Laubenthal氏は、次のように述べています。
ここで重要なことは、男性の精細胞は、成熟するまでに約3ヶ月ほどかかるということです。そのため男性は、妊娠を考えている時期よりもかなり前から喫煙をやめておく必要があるのです。
今まで、妊活中・妊娠中の禁煙といえば女性にばかり焦点が当てられてきましたが、この調査によって、男性も禁煙する必要があるということが明らかになったようです。もしあなたのパートナーが喫煙しているなら、いずれ産まれてくる2人の赤ちゃんのためにも、禁煙をお願いしてみてはいかがでしょうか。

Cigarette smoke-induced transgenerational alterations in genome stability in cord blood of human F1 offspring
http://www.fasebj.org/content/early/2012/06/21/