凍結胚による妊娠に関する調査がホット
凍結胚による体外受精は、妊娠率を上げるのではないかという仮説に基づいた、世界初の研究がシドニーのジェネア不妊クリニックで行われています。このクリニックでは、現在凍結胚と新鮮は胚での妊娠成功率は、同程度ですが、凍結胚のみを用いると成果が上がるのではないかとして研究を続けています。
最近南オーストラリアで行われた研究では、凍結胚を用いた体外受精では、出生時の異常が明らかに少なかったそうです。今後38歳未満の200人の女性を対象にした凍結胚による妊娠についての分析が予定されていますが、新鮮な胚での妊娠と比較して、現状で15%程度妊娠成功率が上がることが予測されているそうです。この研究はおよそ1年ほどで完了すると見られています。
OHSSハイリスクで凍結胚を使ったステファニーさん
The Telegraphのサイトでは、実際に凍結胚での妊娠でクーパーちゃんという現在6ヶ月になる赤ちゃんを授かった、シドニー在住の、ステファニー・リドバリーさんと、ご主人のカイルさんが紹介されています。
ステファニーさんの場合は、18ヶ月間自然妊娠を試みましたが、これがかなわなかったため、体外受精を行うことになりました。
現状では、受精卵を子宮に植えつけるために、女性はホルモン剤の注射などを受け、子宮の環境を整えています。ステファニーさんも新鮮な胚を子宮に移植するために、卵子の採取を行いましたが、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクが高く、子宮環境を整える目的でのホルモン注射に危険を伴うことが分かったので、凍結胚を移植することになったそうです。
新鮮な胚では4週間程度で妊娠が確認できるのに対し、凍結胚では12週間程度が妊娠確認までに必要です。胚が冷凍されてから、自然のサイクルで子宮環境が着床できる状態になるのに2周期を必要とするためです。しかし、ステファニーさんは、健康な赤ちゃんを授かれるのであれば、2ヶ月程度待つことは全く問題にならないとしています。
凍結胚では、特にステファニーさんのように、OHSSのリスクのある人や、その他の不妊治療にまつわるホルモン療法に何らかの問題がある人たちの間でも安全に妊娠が成立する方法として、今後定着することが見込まれています。
一度の卵子採取で複数回の妊娠に対応できることも
また、一度の卵子採取で次の妊娠に備えた胚を確保できる点で、毎回の卵子採取にかかる負担が減ることになります。ステファニーさんは、最初の体外受精サイクルで妊娠に至ったので、現在でも将来に備えて3つの凍結胚が保管されているそうです。
実際に、凍結胚による妊娠はどのくらい成功率が上がるのか、そして赤ちゃんやお母さんの健康上のリスクが低いのか、といった今後の報告が楽しみです。

The Telegraph ; Frozen embryos brought child to life
http://www.dailytelegraph.com.au/lifestyle/Genea Fertility Clinic
http://www.genea.com.au/