母親の胎盤機能と子供の疾患リスク
1月21日、コロラド大学デンバー校アンシュッツメディカルキャンパスの研究チームは、大学プレリリースを通じて、妊娠期の母親の胎盤機能は、子供の将来的な代謝疾患と直接的な関連性をもつと発表した。なお、研究論文は「Diabetes」に掲載されている。
今回、母親の胎盤機能および血圧は、4歳から6歳の子供の体脂肪、トリグリセリド(中性脂肪)レベルと関係があると認められた。なお、体脂肪、中性脂肪は、子供の将来的な心臓病や糖尿病の発症リスク、肥満リスクを示す指標になる。
思春期・成人期の疾患と子宮環境
肥満、循環器疾患などの成人期にみられる疾患は、母親の子宮環境が影響し、在胎期に生じた異常によって誘発されるケースが多いといわれる。
例えば、思春期・若年成人期の2型糖尿病肥満は、肥満の母親の妊娠、あるいは妊娠中の妊娠糖尿病発症が要因になる場合が少なくない。思春期・若年成人期に2型糖尿病を発症した患者のうち半数は、在胎期に肥満・妊娠糖尿病の母親の子宮環境に晒されていたと報告されている。
母親の胎盤と子宮内環境と子供の疾患リスクにおける関係性
研究チームは、出生前コホート研究「Healthy Start」を用いて、2010年から2014年の間で妊娠し、かつ妊娠中の健康状態が良好であった女性1410人を対象に、母親の胎盤および子宮内環境と子供の疾患リスクにおける関係性を検証した。
調査は、妊娠中から出産を経て産後1年間、被験者の子供(現在4~6歳)が1歳になるまで継続された。また、子供が4歳を迎えた段階から6歳までの期間に追跡調査を行い、今後は8歳から10歳の期間にて調査を実施する予定であるという。
子宮環境は、胎盤によって左右される。胎盤が胎児へ栄養を供給し、母親の免疫システムから胎児を守るなど正常に機能することにより、健康的な子宮環境は作られる。一方、胎盤が炎症、インシュリンシグナル伝達などによって変化した場合、子供の将来的な疾患の引き金になるという。
今回、胎盤のIGF-1受容体(インスリン様成長因子1受容体:細胞表面に存在するタンパク質)が、子供の血清トリグリセライド(中性脂肪)に関連することが認められた。中性脂肪は、将来的な肥満、糖尿病リスクを高める。また、胎盤に存在する他のタンパク質は、子供の腕および太ももの脂肪細胞の増加との関連性が確認された。
(画像はプレスリリースより)

University of Colorado Anschutz Medical Campus
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