子癇前症を誘発する要素
ノルウェー科学技術大学(NTNU)分子炎症研究センター(CEMIR)の研究チームは、「Frontiers of Immunology」にて、コレステロール結晶が子癇前症の原因になると発表した。
子癇前症は深刻な妊娠合併症であり、妊娠期において胎盤が正常に発達できない。胎盤の血管が細くなり、血流が低下し、胎児への栄養・酸素の供給は阻害される。現在、子癇前症の治療法は確立されておらず、出産などによる妊娠終了のみとなる。
コレステロールと子癇前症における関係性
今回、研究チームが、子癇前症の女性90人を対象に、出産直後、胎盤サンプル、子宮壁および胎盤の組織サンプルを採取し、コレステロール値を測定したところ、血管を詰まらせる血小板血栓(血小板の含有量の多い血栓)にてコレステロール結晶が検出された。
コレステロール結晶は、血管壁にコレステロールが蓄積されることによって形成され、血の塊となって血管を詰まらせる。コレステロールは、心血管疾患の主な要因といわれる。これまで、子癇前症による心血管疾患リスクの増加が確認されており、今回、子癇前症の女性のコレステロール値に着目した。
それゆえ、コレステロール結晶は、身体にとって有害な物質とみなされるが、研究チームは、特に、強力な炎症イニシエーターであることを確認した。
防御機構がコレステロール結晶を制御できなかった場合、炎症反応は増し、炎症プロセスは大いに高まる。炎症は、母体胎児のインターフェイスと呼ばれる領域にて最も強く現れ、結果、子宮壁および胎盤に生じる。
なお、胎児と胎盤がコレステロールを必要とするため、妊娠中、母親のコレステロール値は上昇する。しかしながら、子癇前症の女性におけるコレステロール値は遥かに高くなり、心血管疾患を誘発するタイプのコレステロールが高い割合を占めたという。
研究チームは、研究の余地は残すものの、将来的には、子癇前症の女性に対してコレステロール値を下げる治療を行うことで子癇前症を治療できると期待する。
(画像はプレスリリースより)

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