フタル酸エステル曝露が生殖機能に与える影響
ケンタッキー大学の研究チームは、「Toxicological Sciences」にて、フタル酸エステル曝露により、ホルモン分泌量など排卵プロセスに変化が生じ、排卵が阻害されると発表した。
フタル酸エステルは可塑性物質であり、化粧品・パーソナルケア製品、食品・飲料容器などのプラスチック製品、建築材料と幅広く利用されている。しかしながら、内分泌撹乱物質であり、内分泌システムに悪影響を及ぼすといわれる。卵巣に直接、影響を与え、排卵障害や不妊を引き起こす要因に成り得る。
フタル酸エステル類曝露と排卵
日常生活を通して、女性は、多種類のフタル酸エステルに晒されている。それゆえ、今回、研究チームは、マウスを用いた動物モデル実験を行い、内分泌撹乱物質であるフタル酸エステル類が排卵に与える影響を検証した。
排卵は、黄体形成ホルモン(LH)サージ(排卵が近づき、黄体形成ホルモンが一過性に放出される現象)によって開始され、プロスタグランジン(PG:子宮を収縮させ子宮内膜の排出を促すホルモン)の生成、プロゲステロン(P4)受容体シグナル、細胞外基質/細胞外マトリックス(ECM)リモデリングが誘発される。
CD‐1(7~8週齢)雌性マウスの胞状卵胞を用いて、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)投与による排卵誘発、フタル酸エステル曝露状態でのhCG投与による排卵誘発を比較したところ、フタル酸エステルに晒された場合、プロスタグランジン量の低下、プロゲステロン受容体の変化が認められた。
また、細胞外基質リモデリングに関与する酵素量が変化し、細胞外基質リモデリングは調節不全に陥った。
マウスによる実験を通じて、研究チームは、フタル酸エステル類が、プロスタグランジン量、プロゲステロン受容体量、細胞外基質リモデリングに関与する酵素量を変化させ、直接、排卵を阻害すると考える。
(画像はToxicological Sciencesより)

Toxicological Sciences
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